「スプレッドシートでの管理に限界を感じてきた」
「ミスや属人化を防ぎたい」
「業務を自動化して、工数を削減したい」
このようにお考えではありませんか?
Googleスプレッドシートは高い柔軟性があり、幅広い業務で利用できるツールです。
しかし、昨今の多様化・複雑化する業務において、スプレッドシートでの業務に課題を感じるケースもあります。
このような場合に、ノーコードツールでスプレッドシートを基盤としたアプリケーションを作成することで、課題を解決し、業務効率を改善できるかもしれません。
本記事では、Googleスプレッドシートをアプリ化できるノーコードツールを5つ紹介します。アプリ化する手順も解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
スプレッドシート管理の課題
スプレッドシート管理で課題を感じるケースの例として、以下があげられます。
- ヒューマンエラーが発生しやすい
- モバイル端末から操作しにくい
- 属人化しがちで引き継ぎがむずかしい
- 自動化・通知機能が不十分
Googleスプレッドシートは、手軽にデータを管理できる反面、業務で本格的に活用しようとすると、さまざまな課題に直面することがあります。
ここでは、具体的にどのような課題があるのかを整理してみましょう。
ヒューマンエラーが発生しやすい
スプレッドシートで手動データ入力をする際には、ヒューマンエラーによる誤入力や、意図しない計算式の削除といった課題が生じる可能性があります。
とくに、複数人でファイルを共有・編集する場合、思わぬタイミングで重要な関数が削除されたり、データや書式が変更されることもあるでしょう。
たとえば、フィルタ機能の使用中にデータを追加すると、そのデータが既存のフィルタ範囲から外れ、集計結果に反映されなくなってしまいます。
このような要因が重なると、データの正確性が損なわれ、業務上のトラブルにつながる可能性があるため、大人数が同時に関わるようなプロジェクトでは特に注意が必要です。
モバイル端末から操作しにくい
外出先や現場でのデータ入力時、スマートフォンやタブレットの比較的小さい画面では、スプレッドシートを操作するのは困難を感じる人もいるでしょう。
とくに、現場で得た情報をデータを更新したい場面では、PCを持参できないこともあるためその場では記録できず、スマートフォンで記録するのも使いづらいと感じ、メモした後にまとめて入力することになりがちです。
また、モバイル版のスプレッドシートアプリでは、マクロや高度な関数が正常に動作しない場合もあるため、機能制限による不便さが課題となるケースも少なくありません。
属人化しがちで引き継ぎがむずかしい
特定の担当者だけが理解している複雑な関数や独自のルールが存在すると、退職や異動の際に業務が停滞してしまうリスクが高まります。
スプレッドシートは関数やGAS(Google Apps Script)などを利用することで、複雑な処理を自動化することも可能です。
その一方で、高度な設計になるほど担当者のスキルの差が生まれやすく、関数やGASを作った本人や仕様を理解しているスタッフしか運用やメンテナンスやできないといった属人化が起こりやすくなってしまいます。
仕様や運用ルールが標準化されておらず、口頭での申し送りに依存している状況では、新しい担当者が同じレベルで業務を継続するのは困難です。
また、業務が属人化すると、蓄積したデータやノウハウが活用されず、組織の生産性が低下してしまう可能性もあります。
標準機能であは自動化・通知機能が不十分
スプレッドシートは基本的な関数機能を搭載しているものの、自動化機能や通知機能は限定的です。
例えば、在庫が一定数を下回った際の自動発注や、期限が近づいたタスクのリマインダー送信などは、標準機能では実現できません。
重要な情報ほど素早く検知し通知できる体制を整えたいものですが、こういった処理を自動で行う場合はGASによる実装や、他のツールに頼らざるを得ません。
大規模になると処理が重くなる
以下のようなケースでは、スプレッドシートの処理が重くなってしまい、業務に遅延が発生するなどのリスクがあります。
- 膨大なデータ量を扱う
- 大人数での同時編集を行う
- 大量・複雑なGASや関数を処理をする
処理が重くなってしまうと画面にデータが表示されなかったり、入力が反映するのに時間がかかってしまい同時編集の上書きリスクなども高まってしまいます。
最悪の場合、同時編集や複雑な処理が中途半端に反映されることで、データ破損してしまうケースも起こってしまうでしょう。
スプレッドシートの課題解決の一手となるノーコードツール
ノーコードツールとは、プログラミングをせずに画面上の操作だけで自動処理やアプリケーションを構築できるツールです。
ドラッグ&ドロップなどで表示画面のパーツを組み立て、設定をするだけでアプリケーションが構築できます。
プログラミングをして開発するシステムと比べて、以下の点が強みです。
- エンジニアでなくてもシステムやアプリを構築できる
- 比較的低い工数で構築できる
- コストを抑えやすい
- 現場の声を反映させやすい
ノーコードツールであれば、既存のスプレッドシートを踏襲したアプリケーションをプログラミングで開発するよりも比較的短期間で構築できます。
アプリ化することによって、最適なデータベース管理ができるため、膨大なデータ量でも処理遅延が起きにくくなったり、同時編集によるリスクを無くす設計にもできるでしょう。
細かな表による管理ではなくなるため、利用者はスマートフォンでの編集もしやすいです。
あわせて自動処理を実装すれば、リアルタイム通知やデータを利用した業務を自動化でき、業務効率の向上も期待できます。
加えて、プログラミング知識不要で内製開発できるため、外部委託費用を削減しながら開発することも可能ですし、修正も画面上で行えるため、現場の声を素早く反映することも比較的容易です。
現場でノーコードツールのスキルが高まれば、現場の中だけで自分たちの業務に最適化されたアプリケーションの開発も可能となるかもしれません。
ただし、高度で複雑なシステムの開発には専門的な設計スキルが必要だったり、ノーコードでは実現できないようなケースもあります。自分たちの業務をノーコードツールで実現できるかをしっかり検討したうえで導入しましょう。
スプレッドシートをアプリ化できるノーコードツール5選
スプレッドシートをアプリ化できるノーコードツールは、以下のとおりです。
- AppSheet
- kintone
- プラスApps
スプレッドシートのデータを活用して、手軽に業務アプリを作成できるノーコードツールは数多く存在します。
ここでは、機能性に優れた代表的なノーコードツールを5つ厳選してご紹介します。
AppSheet
AppSheetは、Googleが提供するノーコード開発プラットフォームです。
Googleスプレッドシートを始め、Excel、Cloud SQL、Salesforceなど、さまざまなデータソースに接続し、それらを基にモバイルアプリやWebアプリを自動で作成できます。
AppSheetは、データの表示形式のカスタマイズ、入力フォームの作成、自動通知の設定など、機能が豊富に搭載されているのが特徴です。
また、無料プランから利用開始できる点も、AppSheetの魅力です。
Googleワークスペースを利用している会社などでは、最初の選択肢として検討してみるとみると良いでしょう。

kintone
kintoneは、サイボウズが提供する国内シェアトップクラスの業務アプリ作成ツールです。
スプレッドシートを自動でアプリ化することはできませんが、ノーコードで日報や顧客管理、案件の進捗などさまざまな業務をアプリとして作成でき、データの蓄積から自動化まで、業務効率の基盤として活躍できます。
加えて、コメント機能や入力制御、アクセス権限の設定など、チームで利用する際の課題にも対応できる機能も揃っています。
さらに、kintoneでは豊富なテンプレートもあるため、基本的なことはテンプレートで実現できますし、業務に合わせて少しカスタマイズするだけで運用を始められます。
インターネット環境さえあればアクセスできることから、テレワークとの相性も良く、働く場所を選ばずに活用できるでしょう。
IP制限やSAML認証などのセキュリティが設定できる点も安心です。

プラスApps
プラスAppsは業務アプリに特化した国産のノーコードツールです。
ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作でアプリケーションを作成でき、ニーズに合わせてAPI連携やワークフローの自動化にも柔軟に対応しています。
特に複数のデータベースを連動させたデータ管理が可能となっており、プログラミングを駆使したシステムにも劣らない柔軟なアプリケーションをノーコードで構築できる点が強みです。
業務に特化した専用のサービスと比較して、任意の機能を必要十分に作れることからオーバースペックを解消できる点もプラスAppsのならではの特徴です。基本プランは1ユーザーあたり、月額300円から利用できる点からコストも抑えやすいです。
導入支援なども行なっているため、本格的なDXや業務改善を行いたい場合にもおすすめです。

GoogleスプレッドシートをAppSheetでアプリ化する手順
ここでは、無料で試せるAppSheetでアプリ化する手順を紹介します。
ノーコードツールがどういうものかを知るきっかけとして使ってみてはいかがでしょうか。
GoogleスプレッドシートをAppSheetでアプリ化する手順は、以下のとおりです。
- スプレッドシートの準備
- AppSheetにサインアップ
- データソースの接続
- アプリ画面のカスタマイズ
- 動作テスト
- アプリの共有・展開
ここでは、Googleスプレッドシートのデータを活用して、AppSheetで業務アプリを作成する基本的な手順を解説します。
①スプレッドシートの準備
まず、アプリのデータソースとなるGoogleスプレッドシートを準備します。1行目には各列の項目名(ヘッダー行)を入力し、2行目以降に実際のデータを入力していきます。
データ型(数値、テキスト、日付など)を意識し、一貫性のある形式でデータを整理するのが大切です。
例えば、日付は「YYYY/MM/DD」形式で統一する、数値項目には数値のみを入力するなどのルールを設けましょう。
また、後々のアプリでの表示や機能を考慮し、必要な列をあらかじめ作成しておくと、アプリ作成がスムーズに進みます。
②AppSheetにサインアップ
次に、AppSheetのWebサイトにアクセスし、Googleアカウントを使ってサインアップします。
Googleアカウントでログインすると、Googleドライブに保存されているスプレッドシートへのアクセスが容易です。
初めて利用する場合は、簡単なチュートリアルが表示されるので、指示に従って進めましょう。AppSheetのプラットフォームにログインできれば、アプリ作成の準備は完了です。
③元となるスプレッドシートを選択
AppSheetのマイページ(My Apps)から「Create」ボタンをクリックし、「Start with your own data」を選択します。
アプリ名を入力して、カテゴリを選択した後、データソースとしてGoogleスプレッドシートを選びます。
自分のGoogleドライブに保存されているスプレッドシートの一覧が表示されるので、アプリ化したいスプレッドシートを選択してください。
AppSheetがスプレッドシートの構造(列名やデータ型など)を自動的に解析し、基本的なアプリの雛形を生成してくれます。
④アプリ画面のカスタマイズ
AppSheetが自動生成したアプリの雛形を基に、画面のレイアウトや表示項目、データの入力フォームなどをカスタマイズしていきます。
「UX」セクションでは、データの表示形式(テーブルビュー、カードビュー、マップビューなど)や、ブランドカラー、アプリアイコンなどを設定可能です。
「Data」セクションでは、各列のデータ型を詳細に設定したり、入力規則(必須項目、選択肢など)を設けたりできます。
「Behavior」セクションでは、データの追加・編集・削除といったアクションや、自動通知、ワークフローなどを設定できます。
⑤動作テスト
アプリの基本的な設定やカスタマイズが完了したら、実際にアプリが意図したとおりに動作するかをテストします。
AppSheetの編集画面には、リアルタイムでアプリの動作を確認できるプレビュー機能が搭載されています。
データの追加、編集、削除、検索、表示形式の切り替えなど、さまざまな操作を試してみて、不具合がないかを確認しましょう。
また、スマートフォンやタブレットなどの実機にアプリをインストールしてテストすると、実際の利用シーンを想定した動作確認ができます。
⑥アプリの共有・展開
アプリの動作テストが完了し問題がなければ、実際に業務で利用するユーザーにアプリを共有・展開します。
AppSheetでは、アプリを共有するユーザーをメールアドレスで指定したり、特定のドメインのユーザー全体に公開したりできます。
また、アプリのインストールリンクを生成して配布することも可能です。
共有されたユーザーは、自分のスマートフォンやタブレット、パソコンからアプリにアクセスし、すぐに利用を開始できます。
必要に応じて、ユーザーごとに利用できる機能を制限する「権限設定」も行えます。
ノーコードツールでよくある質問
ノーコードツールでよくある質問は、以下のとおりです。
- プログラミング知識ゼロでも本当にアプリを作れる?
- ノーコードツールは無料?
- どのノーコードツールを選ぶべき?
- ノーコードで作ったアプリのデータは安全?
ノーコードツールに関心はあるものの、まだ疑問や不安を感じている方もいるかもしれません。ここでは、ノーコードツールに関してよくある質問とその回答をまとめました。
プログラミング知識ゼロでも本当にアプリを作れる?
プログラミングの知識がなくてもアプリを作成できます。
ノーコードツール最大の特長は、ソースコードを一切書かずに、画面上でパーツを組み合わせたり、設定を選択したりするだけでアプリケーションを構築できる点です。
直感的なインターフェースと豊富なテンプレートが用意されているため、専門的なITスキルがない方でも、比較的短期間で業務に必要なアプリを開発することが可能です。
ただし、前述のとおり高度で複雑なアプリを作成する際は、システム設計などのスキルが必要になる場合もあります。
ノーコードツールは無料?
多くのノーコードツールでは、基本的な機能が使える無料プランや、期間限定のトライアルプランが用意されています。AppSheetも無料から利用開始できます。
ただし、作成できるアプリの数や利用できる機能、利用期間などに制限があるのが一般的です。
より高度な機能や多くのユーザーで利用したい場合は、有料プランへの移行が必要になります。料金体系はツールによって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
どのノーコードツールを選ぶべき?
どのノーコードツールを選ぶべきかは、以下の条件により異なります。
- 作成したいアプリの種類
- 必要な機能
- 予算
- ITスキル
例えば、Googleスプレッドシートを簡単にアプリ化したいなら、AppSheetがおすすめです。
より細かな処理や大人数による編集が必要な場合などは、kintoneやプラスAppsなどを活用しましょう。
それぞれのツールに得意分野が存在するため、まずは実現したい機能に合わせていくつか候補を決め、無料プランでツールを実際に試してみてください。
プラスAppsはプランによって導入コンサルも行なっているため、社内での検討が難しい場合は相談してみてはいかがでしょうか。
ノーコードで作ったアプリのデータは安全?
ノーコードツールで作成したアプリデータの安全性は、利用するツールや設定により異なります。
多くのノーコードツールでは、データの暗号化やアクセス権限の設定、二要素認証など、セキュリティ対策に力を入れています。
ただし、アプリの共有設定やアクセス権限の管理は、ユーザー自身が行わなければなりません。
機密情報を扱う場合は、ツールのセキュリティ機能と自社の運用ルールの両面で対策が必要です。
まとめ|ノーコードツールでスプレッドシートの課題を解決しよう
スプレッドシートは柔軟で手軽な反面、規模や複雑さによってヒューマンエラーや属人化、処理が重くなるなどの課題が発生します。
ノーコードツールを活用することで、業務に最適化された高機能なアプリを短期間かつ低コストで作成でき、これらの課題解決につながるでしょう。
ぜひ本記事で紹介したツールなどを検討し、業務改善に役立ててください。
