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社内DXを成功させる秘訣とは?企業が押さえるべき7つのステップ

「社内DXってどう進めればいいの?」
「DXツールはたくさんあるけど、どれを選べば良いのかわからない」

そうした悩みを感じていませんか?

社内DXとは、単にツールを導入するだけでなく、デジタルの力で働き方や組織のあり方そのものを見直す取り組みです。

業務の効率化や生産性向上、人材不足への対応、BCP対策など、企業にとって多くのメリットがある一方で、「思うように進まない」「現場がついてこない」といった壁にぶつかるケースも少なくありません。

本記事では、社内DXの基礎知識から成功事例、具体的な進め方7ステップまで解説しています。

さらに、導入をサポートするおすすめツールや、DXを根付かせるためのポイントも紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事でわかること
  • 社内DXが注目されている理由
  • 社内DXを成功させるための7つのステップ
  • 実際にDXで成果を出した企業の成功事例
目次

社内DXとは?どのような取り組み?

社内DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がデジタル技術を使って、社内の業務プロセスや企業文化そのものを変革する取り組みです。

単にデジタルツールを導入するだけでなく、それによって働き方や組織のあり方を変え、生産性の向上や新たな価値創造を目指します。

働き方改革や人材不足への対応として注目される一方で、取り組みの方向性を誤ると成果につながりません。

まずは、以下の2つの観点から理解を深めていきましょう。

  • 社内DXの定義と全社DXとの違い
  • 「デジタル化」と「DX」の違い

それぞれの意味と実際の業務への影響を知ることで、自社にとって必要なDXの形が見えてくるでしょう。

社内DXの定義と全社DXとの違い

社内DXとは、企業内部の業務や組織、企業文化をデジタル技術によって変革し、生産性向上や効率化、新たな働き方を実現する取り組みを指します。たとえば、紙の申請書を電子化したり、会議をオンラインで行ったりするなどが該当します。

一方、全社DXは、社内だけでなく顧客体験や製品・サービス、ビジネスモデル全体をデジタルで変革し、競争優位性を確立するより広範な概念です。社内DXは、全社DXを推進するための一歩であり、内部基盤を強化する意味合いが強いといえます。

「デジタル化」と「DX」の違い

「デジタル化」と「DX」は似ているようで、実は目的も範囲も大きく異なります。

ここでは、それぞれの特徴を整理した表を使って違いを明確にしていきましょう。

項目デジタル化DX(デジタルトランスフォーメーション
定義アナログ情報や手作業をデジタル形式に変換することデジタル技術を活用して業務やビジネスモデルを抜本的に変えること
目的作業の効率化・省力化競争力の強化・新たな価値の創出
対象範囲部分的な業務プロセス組織全体・文化・ビジネス構造全体

「デジタル化」とは、アナログな情報をデジタル形式へ変換したり、手作業の業務をデジタルツールに置き換えたりする部分的な取り組みを指します。

たとえば、紙の書類をスキャンしてPDFファイルにする作業や、エクセルで手入力していたデータをシステムへ移行するなどが挙げられます。

一方、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、デジタル技術を導入することで、既存の業務プロセス、企業文化、さらにはビジネスモデルそのものを根本から変革し、競争における優位性を確立する、より壮大な取り組みです。

独立行政法人 情報処理推進機構のIPAが作成したDX動向2024によると、DXの取り組みは以下の3段階で示されています。

DX 取組の段階取組項目
デジタイゼーション1.アナログ・物理データのデジタル化
デジタライゼーション2.業務の効率化による生産性の向上
3.既存製品・サービスの高付加価値化
デジタルトランスフォーメーション4.新規製品・サービスの創出
5組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化
6.顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革
7.企業文化や組織マインドの根本的な変革

最初のステップにあたるデジタイゼーションにあたるのがデジタル化です。

したがって、デジタル化はDXを実現するための最初のステップであり、通過点といえるでしょう。

社内DXが必要とされる理由とメリット

現代社会において、社内DXの推進は企業の成長に不可欠であり、さまざまなメリットをもたらします。

社内DXが必要とされる理由とメリットは以下の通りです。

  • 企業競争力の向上
  • 業務効率化と生産性向上
  • 人材不足・働き方改革への対応
  • BCP(事業継続計画)対策

これらのメリットについて、具体的に解説していきます。

企業競争力の向上

企業競争力の向上は、社内DXを進める理由として欠かせません。

どれほど優れた商品やサービスを提供していても、市場の変化に素早く対応できなければ、顧客から選ばれ続けるのは難しくなります。
そのためには、スピード感のある意思決定と、状況に応じた柔軟な対応力が欠かせません。

こうした能力こそが、企業にとっての大きな競争力となるでしょう。

社内DXを進めることで、営業・マーケティング・カスタマーサポートといった部門間の情報を一元的に管理できるようになります。
情報がリアルタイムで共有されれば、顧客への対応もタイムラグなくスムーズに進められます。

さらに、CRMやAIなどを組み合わせて活用すれば、購買履歴や関心の傾向を分析し、それぞれの顧客に最適な提案を行うことも可能です。

このような仕組みを整えることで、顧客満足度の向上だけでなく、市場で選ばれる企業へと成長していく土台を築けます。

業務効率化と生産性向上

業務効率化と生産性向上も、社内DX推進の重要なメリットです。

デジタルツールやシステムを導入することで、これまで手作業で行っていた業務を自動化したり、情報を一元管理したりできます。

たとえば、クラウドベースのプロジェクト管理ツールを導入すれば、部門間の情報共有がスムーズになり、意思決定のスピードも速まるでしょう。

これらの取り組みにより、従業員は本来の業務へ集中し、残業時間の削減にもつながり、企業全体の生産性が高まります。

結果として、企業のコスト削減にも大きくつながるでしょう。

人材不足・働き方改革への対応

人材不足と働き方改革への対応は、社内DXが必要とされる大きな理由です。

人手が限られる中でも事業を維持するには、業務そのものを見直し、属人化を減らす仕組みが欠かせません。

たとえば、業務マニュアルを動画やクラウド上のアプリにまとめて共有すれば、新人でも短期間で仕事を覚えやすくなり、教育コストを抑えられます。

また、Web会議や社内チャットの定着によって、育児や介護をしながらの在宅勤務も現実的になり、働き手の選択肢が広がるでしょう。

DXを進めることで、人手が限られる中でも仕事を回せる仕組みが整い、さまざまな環境の人が無理なく働ける職場づくりにつながります。

BCP(事業継続計画)対策

BCP(事業継続計画)への備えは、社内DXが求められる理由のひとつです。

災害や感染症などで出社が難しくなっても、仕事を止めない体制をつくるにはデジタルの力が必要です。

たとえば、業務データをクラウドに保管しておけば、オフィスが使えなくなっても安全に情報へアクセスできます。

テレワーク環境が整っていれば、自宅からでも業務を続けられます。

非常時に備えて社内の仕組みを整えておくことは、会社の信頼や継続にもつながるでしょう。

社内DXの推進がうまく進まない原因・課題

社内DXを進める企業は増えていますが、思うように成果が出ないケースも少なくありません。その背景には、いくつかの共通する課題があります。特に以下のような原因が、社内DXの足かせとなっています。

  • 経営層のデジタルに対する理解不足
  • DX人材不足、専門知識を持つ人がいない
  • 従業員の抵抗感・現場の協力不足
  • 既存システムとの統合問題
  • 目的が不明確で“単なるIT導入”になっている

ここからは、それぞれの原因について解説していきます。

経営層のデジタルに対する理解不足

社内DXが進まない大きな要因に、経営層のデジタルに対する理解不足があります。

DXはIT導入にとどまらず、組織全体の変革を伴う取り組みです。

しかし、経営層がこの本質を捉えきれていないと、単なるコスト削減や流行として扱われ、十分な投資や人員配置がなされません。

導入する技術の意義や現場への影響が語られないため、社員の共感も得られにくくなります。

DXの推進には、経営層の深い理解と明確なビジョンが欠かせません

DX人材不足、専門知識を持つ人がいない

人材の不足も、多くの企業が直面する深刻な課題です。

DXを推進するには、デジタル技術に精通し、それをビジネスに活用できる知識や以下のようなスキルを持つ人材が求められます。

  • データ分析
  • AI開発
  • クラウドサービスの運用
  • セキュリティ対策など

しかし、このような人材は市場全体で不足しており、採用が難しい状況です。

また、デジタルスキルを身につけるための研修機会が少なかったり、学ぶ意欲を促す仕組みがなかったりすると、必要な人材を育成できません。

結果として、DXプロジェクトの計画立案や実行が遅れたり、期待する成果が出なかったりすることが珍しくありません。

従業員の抵抗感・現場の協力不足

DXを進めるには、現場の協力が欠かせません。

ただ、実際には「今のままで十分」といった声や、新しいツールへの不安から、現場がなかなか前向きにならないこともあります。

慣れない操作に戸惑ったり、仕事が増えると感じたりすることで、変化を嫌う空気が生まれてしまいます。

また、そもそもDXの目的や効果がうまく伝わっていないと、取り組む意味自体が理解されません。

現場の不安や疑問に向き合いながら、きちんと説明し、使い方のフォローもしていく姿勢が大切です。

既存システムとの統合問題

既存システムとの統合問題も、DX推進を阻む大きな要因です。

多くの企業では、部門ごとに異なるシステムを使っていたり、古いシステムを使い続けていたりします。

こうしたシステムは新しいツールと連携しにくく、データの共有や一元管理が難しくなります。

たとえば、顧客情報がバラバラに管理されていると、全体を見渡した対応ができません。

システム同士のつながりをどう作るかを考えたうえで、DXを進めていく必要があります。

目的が不明確で“単なるIT導入”になっている

DXがうまく進まない理由の一つに、「目的があいまいなままITツールだけを導入してしまう」ケースがあります。

DXは単なるデジタル化ではなく、ビジネス全体を変えることが本来の目的です。

しかし、「クラウドを使えばDXになる」といった誤解から、何をどう変えたいのかが不明確なまま進めてしまう企業も少なくありません。

その結果、ツールが活用されず、期待した効果も出ないということもあります。

まずは明確な目標と、それに向けた道筋を持つことが重要です。

社内DXの進め方7ステップ

社内DXを成功させるには、計画的なアプローチが不可欠です。

漠然とデジタルツールを導入するだけでは、期待した効果を得られないかもしれません。

ここでは、DX推進を効果的に進めるための7つのステップを紹介します。

  1. 目的・ビジョンの明確化
  2. 現状把握と課題抽出
  3. 範囲の決定と優先順位付け(スモールスタート)
  4. 推進チーム(担当者・リーダー)とロードマップの作成
  5. 具体的なソリューション・ツールの選定
  6. 実行フェーズと運用体制の構築
  7. 評価と継続的な改善(PDCAサイクル)

1. 目的・ビジョンの明確化

社内DXを進める上で、最初に何を達成したいのか、どのような未来を目指すのかを明確にするのが重要です。

「紙の申請書をなくしたい」「人材不足を補う自動化を取り入れたい」といった具体的な目的を設定します。

ビジョンが共有されていれば、社員一人ひとりがDXの意義を理解し、主体的に取り組めるようになるでしょう。

2. 現状把握と課題抽出

目的とビジョンが明確になったら、次に現在の業務プロセスを詳細に把握し、課題を抽出します。

各部署の業務フローや使用しているツール、データの流れなどを可視化しましょう。

その後、「この作業に時間がかかりすぎている」「データが部署ごとに分散している」「特定の担当者に業務が集中している」といった具体的なボトルネックや非効率な点を洗い出します。

課題を正確に把握することで、本当に必要なデジタル化の範囲や解決策が見えてくるでしょう。

3. 範囲の決定と優先順位付け(スモールスタート)

現状の課題が明らかになったら、DXの取り組み範囲を決定し、優先順位をつけます。

特にDXを初めて導入する企業は、まずはスモールスタートから始めるのをおすすめします。

たとえば、一つの部署や特定の業務プロセスに絞り、小さな成功体験を積み重ねていく方法です。

これにより、リスクを抑えながら効果を検証し、課題があれば柔軟に改善できます。

小さな成功が積み重なれば、他の部署でも導入しやすくなり、社内全体のDXが進みやすくなるでしょう。

4. 推進チーム(担当者・リーダー)とロードマップの作成

DXを円滑に進めるには、専任の推進チームを立ち上げ、担当者やリーダーを明確にすることが欠かせません。

このチームは、IT部門だけでなく、実際の部門からもメンバーを募るとよいでしょう。
IT部門だけでは業務理解が浅いことがあり、実際の部門だけではIT知識が足りないことがあるため、それぞれの部門から担当者を募ることで、より最適な解決策に近づくことが期待できます。

次に、DXの目的達成に向けた具体的なロードマップを作成します。いつまでに何を達成するのか、どのようなステップで進めるのかを明確にし、長期的な計画と短期的な目標を設定します。

これにより、プロジェクト全体の進捗を管理しやすくなり、関係者間の連携もスムーズになるでしょう。

5. 具体的なソリューション・ツールの選定

DXの目的とロードマップに基づいて、具体的なソリューションやツールを選定します。

業務アプリの開発にはノーコードツール、データ分析にはBIツール、顧客管理にはCRMシステムなど、解決したい課題に最適なツールを選びましょう。

選定の際は、機能やコストだけでなく、既存システムとの連携性や操作のしやすさ、サポート体制なども考慮するのが重要です。

可能であれば、無料トライアルやデモを活用し、実際に使用感を確かめてから導入を決めましょう。

6. 実行フェーズと運用体制の構築

ツール選定が終わったら、いよいよ実行フェーズに入ります。
新しいシステムやツールを導入し、業務プロセスを変更します。

社員がスムーズにツールを使えるようにするためには、丁寧な研修やマニュアルの整備が欠かせません。

また、導入後の運用を安定させるための体制構築も重要です。
たとえば、トラブル発生時の対応フローや、システムに関する問い合わせ窓口などを明確にします。

運用体制が整っていれば、導入後の混乱を最小限に抑え、スムーズな定着を促せるでしょう。

7. 評価と継続的な改善(PDCAサイクル)

DXは一度実行したら終わりではありません。
導入効果を定期的に評価し、継続的な改善へとつなげられてはじめてDXができているといえます。

具体例としては、KPI(重要業績評価指標)を設定し、目標達成度を定量的に評価します。
もし期待した効果が出ていない場合は、原因を分析し、改善策を見直すなどの調整をPDCAサイクルに沿って行いましょう。

評価と改善を繰り返すことで、DXの効果を最大化し、企業全体の生産性向上につなげられます。

社内DXを成功させるポイント

DXを成功させるには、以下のポイントを押さえた戦略的な取り組みが不可欠です。

  • 経営層と現場の両輪で取り組む
  • 業務プロセスの整理・再構築
  • デジタルリテラシー教育・研修の徹底

それぞれ解説していきます。

経営層と現場の両輪で取り組む

社内DXを成功させるには、経営層と現場の連携が欠かせません。

まずは経営層がDXのビジョンを示し、目指す方向を全社に伝えることが出発点です。
「AIで顧客対応を個別最適化する」といった具体的な目標を掲げると、現場も動きやすくなります。

また、現場の意見を聞ける体制も重要です。
各部署から代表者を出して課題を共有すれば、実際の業務に合った改善案が見えてくるでしょう。
現場の声を施策に活かせば、社員の納得感も高まり、自分ごととして取り組めるようになります。

経営層が旗を振り全体の認識をあわせ、現場が手を動かす。

両者が一体となって進めることが、DX成功のカギです。

業務プロセスの整理・再構築

DXを進める前にやるべきことは、今の業務の流れをしっかり見直すことです。

どんなに便利なツールを入れても、非効率なやり方のままでは効果が出ません。

まずは、日々の業務を一つひとつ見えるようにして、「どこで時間を食っているのか」「どこでミスが起きているのか」といったポイントを整理しましょう。

そのうえで、無駄な工程を減らしたり、役割分担を見直したりして、シンプルで動きやすい流れに整えていくことが大切です。

デジタルリテラシー教育・研修の徹底

DXの効果をしっかり引き出すには、従業員のデジタルリテラシーを高めることが欠かせません。
どんなツールも、使いこなせなければ意味がないからです。

新しいSaaSを導入するなら、操作方法だけでなく「業務にどう役立つのか」まで伝える必要があります。

そのためには、ITの基本からデータ分析、クラウド活用、セキュリティまでを含めた研修が効果的です。

ツールに慣れていない人にはOJTや個別フォローを取り入れ、eラーニングや社内勉強会も活用すると、理解が深まるでしょう。

DX人材の確保・育成(外部コンサルの活用も含む)

DXを進めるには、専門的な知識やスキルを持つ人材が欠かせません。
社内にそのような人がいない場合は、中途採用でデータサイエンティストやAIエンジニアなどの人材を採用する方法があります。

一方で、既存社員を育てることも有効です。
プログラミング研修やデータ分析講座などを通じて、現場のスキルを底上げしていきましょう。

また、自社だけで対応が難しい場面では、外部のDXコンサルを頼るのも一つの手です。

第三者の視点や経験を活かすことで、社内だけでは見落としがちな課題への気づきが期待できます。

スモールスタートから拡大・常にPDCAを回す

DXを全社一斉に始めようとすると、混乱や反発が起きやすくなります。
まずは小さく始めて、実際にどう変わるかを確かめながら進める方が現実的です。

たとえば、営業部門だけでクラウド日報を試しに使ってみて、「どれだけ入力されているか」「業務のスピードはどう変わったか」といった点を数か月かけて見ていきます。

その結果をもとに、必要な改善を加えながら、他の部署にも広げていくというようなステップを踏めば、現場も無理なくついてきやすくなるでしょう。

PDCAのサイクルを回し続けることが、DXを着実に根づかせるコツです。

成果の“見える化”と社内浸透(社内ポータルやイベントで共有)

DXをうまく進めるには、成果を社内で共有し、全体のモチベーションを高めることが大切です。

どんなに効果があっても、それが見えなければ現場は「本当に意味があるのか」と疑問を持ってしまいます。

たとえば「業務時間が20%減った」「顧客満足度が10ポイント上がった」など、具体的な数字で成果を伝えると、説得力が増します。社内ポータルで事例を紹介したり、全社員向けのイベントや表彰で発表するのも効果的です。

小さな成功を見せていくことで、「自分たちの部署でもやってみよう」と思う空気が広がり、DXが会社全体に広まっていくでしょう。

社内DXがもたらす効果・成功事例

社内DXは、単なるデジタルツールの導入ではありません。

業務プロセスを根本から見直し、企業文化を変革することで、生産性向上やコスト削減、顧客満足度の向上など、さまざまなメリットをもたらします。

ここでは、実際にDXを成功させた企業の事例を紹介します。

ファミリーマート–AI活用による業務効率化と従業員負担の軽減

ファミリーマートは、人手不足や人口減少社会に対応するため、クーガー社が開発した人型AIアシスタント「レイチェル」を約7,000店舗に導入しました。

レイチェルは、店長やスーパーバイザー(SV)の業務をAIがサポートし、店舗運営の効率を向上させる目的があります。
タブレット端末を通じて、店長やSVはAIに話しかけるだけで、商品の発注ポイント、前日の売上データ、未導入商品一覧などの情報を入手できます。

レイチェルの最大の特長は、その双方向のコミュニケーション能力です。
毎日大量のデータを分析し、売れ筋商品の販売状況の確認や、販促物の設置忘れなどの業務リマインドを自動で通知します。

また、店長やSVの性格に合わせたコミュニケーションをとる機能も搭載しており、競争意欲の強い人には販売順位を提示するなど、個人の特性に応じた情報提供が可能です。

これにより、SVは資料作成にかかる時間を約20〜30%削減でき、本来注力すべき商圏分析や店舗指導に時間を割けるようになりました。

出典:ダイヤモンド・チェーンストア

グランド印刷株式会社

グランド印刷株式会社は、リーマン・ショック後の経営環境の悪化を受けて、従来の広告代理店を通じた下請け型のビジネスから脱却しました。

そして、エンドユーザーに直接販売するモデルへと大きく舵を切り、DXを軸に事業を再構築しました。不動産会社や工務店向けに数百種類の看板デザインをテンプレート化し、Web通販で販売する仕組みを整備。営業担当のスキルに依存しない体制を実現しています。

さらに、業務の拠点間連携に課題が生じたことを受けて、クラウドツールの導入と基幹システムの開発に着手。情報を一元管理できるようにし、業務効率を改善しました。

販売データの活用によって新たな商品開発も進み、コロナ禍にはフェースシールドなどの新規事業で最高売上を達成しています。

出典:中小企業庁

社内DX導入に役立つツール・システム

社内DXを推進するうえで、目的に合ったツールやシステムの選定は欠かせません。業務の効率化や情報共有の円滑化、意思決定のスピード向上など、課題ごとに適したツールを導入することで、DXの効果を実感しやすくなります。

ここでは、社内DXを支援する代表的なツールを用途別に紹介します。

  • オンライン会議システム(Zoom/Microsoft Teams/GoogleMeetなど)
  • コミュニケーションツール(Slack/Chatwork/社内SNS)
  • ワークフローシステム(申請・承認フローの電子化)
  • RPAツール(Power Automate/UiPath/WinActorなど)
  • BIツール(Tableau/Power BIなど)
  • プロジェクト管理ツール(Trello/Asana/Backlogなど)
  • 経費精算システム/人事管理システム
  • 電子契約ツール/書類管理システム

オンライン会議システム(Zoom/Microsoft Teams/Google Meetなど)

オンライン会議システムは、働く場所を選ばない環境づくりに欠かせません。

テレワーク中の社員や、拠点が離れたチーム同士でも、すぐに顔を合わせて話ができるため、会議のために移動する必要がなくなります。

移動時間や交通費が減ることで、仕事の効率も上がります。

さらに、録画機能を使えば、その場に参加できなかった人もあとから内容を確認できるので、情報の共有もしやすい点も大きなメリットです。

コミュニケーションツール(Slack/Chatwork/社内SNS)

コミュニケーションツールは、社員間の情報共有や連携を円滑にするために不可欠なツールです。

メールよりも気軽にやり取りができ、プロジェクトごとのグループ作成やファイルの共有も簡単に行えます。

SlackやChatworkでは、チャット形式で手軽に情報共有ができ、チーム間の連携を強化します。社内SNSを導入すれば、部門横断での情報発信や社員同士の交流を促進し、社内の一体感を高める効果も期待できるでしょう。

ワークフローシステム(申請・承認フローの電子化)

ワークフローシステムは、社内での申請や承認プロセスを電子化するシステムです。

これまで紙で行っていた稟議書や経費申請などをシステム上で行えるため、承認までの時間を大幅に短縮し、業務の停滞を防ぎ、より迅速な意思決定につながります。

外出先からスマートフォンで申請や承認ができるようになり、申請者だけでなく承認者の負担も軽減できます。

また、承認状況の可視化や履歴の管理も容易になり、内部統制の強化にもつながるでしょう。

RPAツール(Power Automate/UiPath/WinActorなど)

RPA(Robotic Process Automation)ツールは、これまで人間が手作業で行っていた定型的で反復的な業務を自動化するソフトウェアロボットです。

データの入力やコピー&ペースト、システム間の情報連携などを自動化することで、人的ミスの削減と作業時間の短縮になります。

経理業務での伝票入力、人事部門でのデータ更新、営業部門での顧客情報登録など、さまざまな業務に適用可能です。

これにより、社員はより創造的で付加価値の高い業務に集中できるようになるでしょう。

BIツール(Tableau/Power BIなど)

BI(ビジネスインテリジェンス)ツールは、企業内に蓄積された大量のデータを収集、分析し、経営戦略の意思決定に役立つ形で可視化するツールです。

売上データや顧客データ、生産データなどをグラフやダッシュボードで分かりやすく表示し、現状の課題や新たな傾向を素早く把握できます。

これにより、経験や勘に頼るだけでなく、データに基づいた客観的な意思決定が可能となり、ビジネスチャンスを逃さず、迅速な戦略立案に貢献するでしょう。

プロジェクト管理ツール(Trello/Asana/Backlogなど)

プロジェクト管理ツールは、複数のメンバーが関わるプロジェクトの進捗やタスク、課題を一元的に管理するためのツールです。

タスクの割り当て、期日の設定、進捗状況の共有などをリアルタイムで行えるため、プロジェクト全体の可視性を高め、遅延やボトルネックの発生を未然に防ぎます。

たとえば、Trelloではカンバン方式でタスクを視覚的に管理し、Asanaでは複雑なプロジェクトも段階的に管理できます。

チームの生産性向上とプロジェクトの成功に大きく貢献するでしょう。

経費精算システム/人事管理システム

経費精算システムは、交通費や出張費などの経費申請・承認・精算プロセスを効率化するシステムです。領収書のペーパーレス化や自動仕訳機能により、経理部門の負担を大幅に軽減します。

また、人事管理システムは、従業員の基本情報、勤怠、給与、評価などを一元的に管理するシステムです。

入社から退職までの人事関連業務を効率化し、データに基づいた人材育成や配置戦略を可能にします。

これらのシステム導入により、管理業務の効率化とデータの有効活用が進むでしょう。

電子契約ツール/書類管理システム

電子契約ツールは、契約書の作成から締結までをオンライン上で行うツールです。

紙の契約書に比べて、印紙代や郵送費の削減、契約締結までの時間短縮といったメリットがあります。

遠隔地にいる取引先との契約もスムーズに進められるでしょう。

また、書類管理システムは、社内の文書やファイルをデジタル化し、一元的に管理するシステムです。

必要な情報を素早く検索できるため、紛失のリスクも低減します。

ペーパーレス化を促進し、業務効率とセキュリティの両面で貢献するツールです。

社内DXに関するよくある質問

社内DXを進める上でよくある3つの質問について解説していきます。

  • 社内DXを進めるにはどんな人材・スキルが必要?
  • ツール導入後、従業員が使いこなせない場合は?
  • スモールスタートで始める場合の最初のステップは?

社内DXを進めるにはどんな人材・スキルが必要?

社内DXを推進するには、ITに詳しい人だけでなく、現場の業務に対する理解や社内での調整力を備えた人材が求められます。

なぜなら、業務の実態を把握しないままツールだけを導入しても、現場に根づかず、活用されないままで終わってしまうからです。

そのため、業務内容を深く理解している担当者と、ITリテラシーを持ったメンバーが連携し、両者の知見を活かしながらプロジェクトを進めることが重要です。

ツール導入後、従業員が使いこなせない場合は?

まずは、現場の業務にどう役立つかを説明し、利便性を実感してもらうことが第一歩です。

具体策は以下の通りです。

  • 現場で使う画面だけを抜粋したマニュアルを配布
  • 5分以内で終わる社内向け操作動画を作成
  • 小規模な運用から開始し、段階的に機能を追加

必要なのは「教育」よりも「体験による理解」です。

初期段階では操作のシンプルさを重視し、業務に自然と組み込めるような工夫を取り入れましょう。

スモールスタートで始める場合の最初のステップは?

スモールスタートで社内DXを始めるなら、まず「定型業務の見直し」から着手するのが効果的です。

定型業務は対象範囲が明確で、成果も可視化しやすいため、改善効果を実感しやすくなります。

まとめ

本記事では、社内DXの基礎から実践的な進め方、導入事例や活用ツールまでを詳しく紹介しました。

社内DXは単なるIT導入ではなく、業務や文化そのものを見直す長期的な取り組みです。

小さな成功を積み重ねながら、自社に合ったDXのかたちを見つけていくことが成功への近道になります。

まずは定型業務の見直しや、小さい業務範囲でのツール導入を検討してみてください。

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