DX推進を任されたものの、SaaS・PaaS・IaaSという言葉を聞いて「どれを選べばいいのか分からない」とお困りではありませんか?
これらのクラウドサービスは、それぞれ提供範囲や活用シーンが大きく異なるため、違いを理解せずに導入すると、コストが無駄になったり期待した効果が得られなかったりする可能性があります。
本記事では、非エンジニアの方でも理解しやすいよう、SaaS・PaaS・IaaSの基本概念から具体的な選び方まで、DX推進に必要な知識を分かりやすく解説いたします。自社に最適なクラウドサービスを選定したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
SaaSとは?すぐに使える完成型クラウドサービス
基本概念と仕組み
SaaS(サース:Software as a Service)とは、インターネット経由でソフトウェア機能を提供するクラウドサービスです。従来のように自社でソフトウェアを購入・インストールする必要がなく、Webブラウザがあればすぐに利用を開始できます。
まるで電気や水道のような公共サービスのように、必要な時に必要な分だけソフトウェア機能を利用できる仕組みと考えていただくと分かりやすいでしょう。
代表的なSaaSサービス例
ここでは、多くの企業で活用されているSaaSサービスを一部ご紹介します。
業務効率化
- Microsoft 365
- Google Workspace
- Slack
経理・会計・財務
- freee
- マネーフォワードクラウド
- 弥生会計オンライン
SaaSのメリット・デメリット
メリット
- 導入が迅速(数日から数週間)
- 初期費用が抑えられる
- セキュリティ対策がサービス提供側で実施済み
デメリット
- カスタマイズ性が限定的
- 長期利用時のコスト累積
- データの保管場所をコントロールしづらい
適用シーンと活用例
SaaSは以下のような場面で威力を発揮します。
業務効率化を図りたい場合
チームコラボレーション、文書管理、コミュニケーション改善など、既存業務の効率化を目的とする際に最適です。実際に導入した企業では、会議時間や書類作成時間の削減・短縮といった成果を上げています。
標準的な機能で十分な場合
特殊な業務要件がなく一般的な機能で業務が完結する場合、SaaSはコストパフォーマンスに優れた選択肢となります。
PaaSとは?アプリ開発に特化したプラットフォーム
基本概念と仕組み
PaaS(パース:Platform as a Service)は、アプリケーション開発・運用に必要なプラットフォーム環境をクラウド上で提供するサービスです。開発者がアプリケーション開発に集中できるよう、サーバーやデータベース、開発ツールなどのインフラ部分(開発環境面)をあらかじめ用意してくれています。
料理に例えると、食材と調理器具、キッチンがすべて揃った状態で借りることができ、あとは料理を作るだけという環境に近いイメージです。
代表的なPaaSサービス例
ここでは、多くの企業で活用されているPaaSサービスを一部ご紹介します。
- AWS(Amazon Web Service)
- Google Cloud
- kintone
- Salesforce Platform
PaaSのメリット・デメリット
メリット
- 開発期間の大幅短縮
- インフラ管理業務からの解放
- システムの規模や利用負荷の自動対応
- 開発チームの生産性向上
- セキュリティの自動更新
デメリット
- 特定の環境下への依存
- カスタマイズできる範囲の制限
- データ移行の複雑さ
- 技術的な学習コストが必要
適用シーンと活用例
PaaSは以下のような状況で真価を発揮します。
新しいWebアプリケーションを開発する場合
顧客向けポータルサイトや社内業務システムなど、オリジナルのアプリケーションを開発する際に、開発期間を大幅に短縮できます。
スタートアップや小規模チームでの開発
限られたリソースで効率的に開発を進める必要がある場合、インフラの心配をせずにアプリケーション開発に専念できる環境は非常に価値があります。
IaaSとは?自由度の高い仮想インフラサービス
基本概念と仕組み
IaaS(アイアース:Infrastructure as a Service)は、サーバー、ストレージ、ネットワークなどのITインフラをクラウド上で提供するサービスです。物理的なハードウェアを購入・設置することなく、必要な分だけ仮想的なインフラリソースを利用できます。
オフィスビルの貸し出しに例えると、建物の構造や基本設備は提供されるものの、内装や家具の配置は自由に決められるというイメージです。
代表的なIaaSサービス例
- AWS(Amazon Web Service)
- Google Cloud
- Oracle Cloud Infrastructure
- さくらのクラウド
IaaSのメリット・デメリット
メリット
- 高い柔軟性とカスタマイズ性
- 必要に応じたリソースの拡張・縮小
- 物理サーバー購入の初期投資不要
- 災害対策・バックアップの充実
- グローバル展開への対応力
デメリット
- 専門知識が必要
- 運用・保守の負担
- セキュリティ対策は自己責任
- コスト管理の複雑さ
- 導入・設定に時間がかかる
適用シーンと活用例
IaaSは以下のような場面で最適な選択となります。
既存システムのクラウド移行
企業が自社の建物内にサーバーなどのITインフラを保有し、自社で運用管理している基幹システムを、設定をほぼそのままでクラウドに移行したい場合に適しています。実際に移行を実施した企業では、システム維持費用を削減しながら、可用性を向上させた事例があります。
特殊な要件がある業務システム
法規制への対応や特別なセキュリティ要件など、一般的なSaaSやPaaSでは対応できない要件がある場合、IaaSの柔軟性が威力を発揮します。
SaaS・PaaS・IaaSの違いとは?比較で理解する3つのポイント
重要な違いのポイント
3つのクラウドサービスの違いを理解するうえで、最も重要なポイントをご説明します。
提供範囲の違い
SaaSは完成したアプリケーション、PaaSは開発プラットフォーム、IaaSは基盤インフラという具合に、提供される範囲が大きく異なります。SaaSは「すぐ使える」、PaaSは「開発に集中できる」、IaaSは「自由に構築できる」と覚えていただくと分かりやすいでしょう。
カスタマイズ性の違い
IaaSが最も自由度が高く、SaaSが最も制限があります。自社の業務に完全に合わせたい場合はIaaSを、標準的な機能で十分ならSaaSを選ぶという判断基準が有効です。
運用負担の違い
SaaSは運用業務がほぼ不要ですが、IaaSは専門知識を持った担当者による継続的な運用が必要になります。あなたの会社のIT部門の体制も考慮して選択することが重要です。
比較表
| 項目 | SaaS | PaaS | IaaS |
| 提供範囲 | アプリケーション全体 | 開発・実行環境 | インフラのみ |
| カスタマイズ性 | 低い | 中程度 | 高い |
| 導入期間 | 数日~数週間 | 数週間~数ヶ月 | 数ヶ月~ |
| 初期費用 | 低い | 中程度 | 高い |
| 運用負担 | 軽い | 中程度 | 重い |
| 専門知識要求レベル | 不要 | 中程度 | 高い |
| セキュリティ責任 | サービス提供側 | 共同責任 | 利用者側 |
| 拡張性 | 制限あり | 高い | 非常に高い |
| データ移行の容易さ | 困難 | 中程度 | 比較的容易 |
利用シーン別の選び方
以下のリストを参考に、あなたの会社に最適なサービスを判断してみてください。
SaaSを選ぶべき場合
- 業務効率化が主目的
- IT専門スタッフが限られている
- 迅速な導入が必要
- 標準的な機能で業務要件を満たせる
- 初期投資を抑えたい
PaaSを選ぶべき場合
- オリジナルアプリケーションを開発したい
- 開発チームはいるがインフラ担当者がいない
- 細かい単位での開発を採用している
- 将来的なスケール拡大を見込んでいる
- 開発期間の短縮を重視する
IaaSを選ぶべき場合
- 既存システムをクラウド移行したい
- 特殊な要件やカスタマイズが必要
- IT部門に十分な専門スタッフがいる
- 長期的なコスト最適化を図りたい
- セキュリティを自社でコントロールしたい
3つのクラウドサービスの違いを理解し、自社のDX推進を成功させたいとお考えになりましたら、以下を参考にしてください。


まとめ:自社に最適なクラウドサービスで成功するDX推進
本記事でご紹介した内容を整理すると、以下の重要なポイントが挙げられます。
- SaaSは業務効率化に最適で、専門知識不要で迅速に導入できる反面、カスタマイズ性には限界がある
- PaaSは開発に特化しており、アプリケーション開発を効率化できるが、プラットフォーム依存のリスクがある
- IaaSは高い柔軟性を提供する一方で、専門知識と継続的な運用体制が必要
- 選択の決め手は業務要件、社内IT体制、コスト、拡張性の4つの観点での総合判断
DX推進を成功させるためには、まず自社の現状と目標を明確にし、それに適したクラウドサービスを選択することが重要です。迷った場合は、SaaSから始めて徐々に他のサービスを組み合わせていくアプローチをおすすめします。
無料トライアルなどを活用して、ぜひ一度体験してみましょう。
あなたの会社のDX推進において、今回の情報が最適なクラウドサービス選択の参考になれば幸いです。

